妊娠成績の解説

当クリニックにおける妊娠成績についての解説

[ 2000.2.15~2019.12.31までの統計 ]

妊娠率をはじめとする妊娠成績は、治療を受けられる患者様の不妊原因や年齢に大きく影響され、施設により受診される患者様の背景が異なるため他施設のデータと単純に比較することはできません。あくまでも、今現在の当クリニックの現況を知るためのひとつの手段であるとお考えいただきたいと思います。

1.一般不妊治療成績について

自然妊娠と人工授精による妊娠とに分けて統計をとりました。ここで言う自然妊娠とは、夫婦生活上での性交渉による妊娠を意味します。

一般不妊治療でタイミングをはかる場合、「自然周期(または卵巣刺激周期)-卵胞計測-hCG投与-黄体ホルモン補充」を基本的な管理法としています。ただし、自然周期の自然妊娠に限り、そのおよそ25%(960例)程度がこの基本的な管理法によらない検査終了後や治療休息中の自然妊娠となっています。

ここで目を引くのは、自然周期での妊娠です。自然妊娠(3849例)と人工授精による妊娠(999例)を合わせると一般不妊治療による妊娠(6290例)の77.1%を占め、いかにタイミングが大切であるかがわかります。

一方、卵巣刺激よる妊娠では、クロミフェンでもhMGでもほぼ同数の妊娠が得られています。自然妊娠と人工授精による妊娠を合わせて一般不妊治療での妊娠に占める割合は、クロミフェンでは11.6%、hMGでは11.4%でした。

なお、クロミフェン投与による妊娠は、大半が使用開始後5周期以内の妊娠でした。それ以上の使用では着床環境が悪くなることがあり、クロミフェンを使用する場合は、5周期程度で中止するようにしています。

人工授精による妊娠も大半は5周期以内に妊娠しており、5周期程度施行しても妊娠が成立しない場合には治療法の再検討あるいは生殖補助医療(体外受精)へのステップ・アップも考慮すべきものと判断されます。

なお、人工授精の施行周期あたりの妊娠率(1回あたりの妊娠期待率)は、7~8%程度です。(不妊治療を受けられる方々の自然にまかせた場合の1周期あたりの妊娠期待率は5%以下と推測されますので、妊娠期待率を2倍程度引き上げることができると言えます。)

2.生殖補助医療成績について

体外受精(新鮮胚移植)成績に示したものは、一般体外受精と顕微授精を合わせたものです。5896名の患者様を対象に、のべ9957回の採卵を行い、4461回の胚移植を行った結果、1572回の妊娠が確認されました。胚移植あたりの妊娠率は、35.2%でした(2017年の全国平均:21.4%)。流産が353回で妊娠あたりの流産率は、22.5%でした(2017年の全国平均:25.2%)。多胎妊娠が188回で妊娠あたりの多胎妊娠率は、12.0%でした(2017年の全国平均:2.4%)。ここで、品胎は三つ子を意味しますが、この10例は、開院して3年以内に生じたものです。それ以降は、移植胚数を基本的に2個以下に制限(最近の10年間は基本的に1個移植)しているため多胎妊娠を急速に減少させることができ、最近10年間での多胎妊娠の発生はありません。卵巣過剰刺激症候群の発症が予想される場合、あるいは着床環境が不良と判断された場合、新鮮胚移植を行わず良好胚を一旦凍結保存し、凍結胚移植としたほうが良い結果が出ることがあります。全胚凍結とは、そのような方針で行ったもので3949回あり、近年この方法の増加が顕著です。また、胚移植のキャンセル(卵が回収されなかった場合、受精しなかった場合、卵の分割が途中で停止した場合)が1547回ありました。

顕微授精の成績も新鮮胚移植の成績とほぼ同様の結果でした。

凍結胚移植の妊娠率が、近年、急上昇しています。これは、従来、緩慢凍結法が主流であった胚凍結法が急速凍結法に流れが変わったためですが、それを可能ならしめたのは凍結保存液の開発です。これにより、胚盤胞にまで到達した良好胚を選別して凍結できるようになりました。したがって、凍結胚移植を行うことができること自体が着床率の高い胚を戻すことになるため、高い妊娠率につながるわけです。また、ホルモン補充による子宮内膜を調整しつつ胚移植を行うことでさらに高い着床、妊娠率が期待できるようになりました。現在、9084回の凍結胚移植中、4296回の妊娠が確認され、47.3%の妊娠率となっています(2017年の全国平均:34.4%)。

体外受精に限らず生殖医療全般に言えることですが、妊娠率は年齢とともに低下し、それにかわり流産率が上昇してまいります。卵子の加齢現象と理解されていますので、充分なご理解をお願いしたいと思います。20歳代では50%前後の高い妊娠率が期待できます。流産率も18%と一般的な流産率とほとんど差はありません。30歳代前半でも、45%前後の高い妊娠率で、流産率も、18%弱となっています。30歳代後半になると35%前後にまで妊娠率は低下しますが、特に38歳以降で低下が顕著になります。流産率は、26%弱にまで上昇します。40歳以降では、妊娠率が13%程度にまで低下し、流産率が40%前後にまで急上昇してしまいます。なお、当クリニックにおける妊娠・出産例の最高齢は47歳となっていますが、43歳以降での妊娠・出産例は少数です。

(*)移植胚数について

近年の不妊治療による多胎妊娠の増加傾向と産科医の減少傾向に鑑みて、多胎妊娠抑制の必要性が叫ばれています。日本産科婦人科学会では、「移植胚数は、基本的に1個を厳守すること。ただし、妊娠しない場合には2個まで可とする。」との指導を行っており、当クリニックにおいてもこの指導を厳守しています(35歳以上あるいは頻回治療例であっても良好な胚盤胞であれば1個移植を推奨しています)。この方針によっても妊娠率が極端に低下することはありません。

(*)近年の体外受精治療の流れ

近年は、新鮮胚移植を行わず、良好胚・胚盤胞を一旦凍結保存(全胚凍結)し、ホルモン補充周期で凍結胚移植を行うという方法が大きな流れになっています。日本では2017年に、56,617名の児が生殖補助医療により生まれましたが、このうち48,060名(84.9%)が凍結胚移植によるものでした。

2019年の当クリニックにおける生殖補助医療による442名の妊娠者中439名(99.3%)が凍結胚移植によるものでした。現在、当クリニックにおいてはほぼ全例で全胚凍結となっており、新鮮胚移植はごくわずかです。

妊娠成立周期に行った治療(2019年)

2019年、当クリニックでは不妊治療により727名が妊娠されました。一般不妊治療で285名(タイミング療法で206名、人工授精で79名)もの方々が妊娠されています。また、生殖補助医療(凍結胚移植)により439名が妊娠されました。生殖補助医療に移行する前に、一定期間、一般不妊治療でしっかりと対応するだけの価値があることが実証されています。また、近年胚の凍結保存技術が進歩し、新鮮胚移植の件数が減少する一方凍結胚移植の件数が増加しています。これは、当クリニックに限らず日本全国の趨勢となっており、凍結胚移植で高い妊娠率(当クリニックでは、胚移植あたり45~50%の妊娠率)が得られています。

妊娠成立周期に行った治療(2019年)
合計727名

本邦における総出生児数に対するART出生児の占める割合

西暦 ART出生児数 総出生児数 (%)
1999 11,929 1,177,689 1.01
2008 21,704 1,091,156 1.99
2011 32,426 1,050,806 3.09
2012 37,953 1,037,231 3.66
2013 42,554 1,029,816 4.13
2014 47,322 1,005,677 4.72
2015 51,001 1,005,677 5.07
2016 54,110 976,978 5.54
2017 56,617 946,065 5.98

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